ちょこっと寄り道
真っ赤な夕焼け
年齢は、35歳くらい。肝っ玉母さんのように大きくふくよかな体つきで、声も大きく、ガラガラとした喋り方するのが特徴だった。ツアーガイドの黄さんの全然面白くもないジョークにも、心底楽しそうにガハガハと笑っていた。この楽しい旅の道連れは、アニメに登場する『ガキ大将の妹』に面差しが似ていた。
彼女の仲間からの情報では、千葉の植木屋に嫁いでいるらしい。そういえば、上着を脱いだ時に、女にしては逞しく二の腕にくっきりと日焼けの跡があった。
おそらく、植木屋の仕事を手伝いながら家事をこなす元気で明るい働き者なのだろう。パタパタと過ぎていく毎日。そして、久しぶりの気のおけない女友達との海外旅行。3泊4日の旅行は、忙しい彼女にとって、待ちに待った楽しい旅行に違いない。実際、何をするにも楽しいらしく、パリパリと張り切っていた。
買い物の量も半端ではない。土産物屋でも、免税店でも、空港でも、たくさんの土産を買い、最後は、大荷物になっていた。きっと、子供たちと愛するだんな様、お姑さん、お舅さん、両親、兄弟姉妹、そして、近所のお喋り友達全員に何かしらの土産を買ったのだろう。
そんな想像をしていると、彼女がこの上なく可愛らしく思えてきた。
ガラガラしているけれど、細かで温かい家庭を築いているのだろう。粋でいなせな植木職人のだんな様は、日焼けして引き締まった肉体のかなりいい男のような気がする。彼女も、今でこそ肝っ玉母さんだが、新婚の頃は、ほっそりとして愛らしかったかもしれない。
成田からのリムジンバスに揺られながら、彼女のことを懐かしく思い出していると、あっと言う間に、レインボーブリッジが見えてきた。東京湾にかかるレインボーブリッジを眺めると、『帰ってきたのだなあ』となんだかほっとする。
彼女も家族が待つ千葉の家に辿り着いたのだろうか。
明日の朝、きっと彼女は旅行の疲れなんかなんのその。早起きしてたくさんの洗濯物を洗い上げ、フンフンと楽しげに鼻歌を歌いながら、だんな様に持たせるお弁当のおかずの甘い卵焼きを焼いているのだろう。
ふと、気付くと、夕暮れ色に染まるレインボーブリッジ。
『来年もまた楽しい旅行に行けるといいね!』と瞼を閉じてみると、真っ赤な夕焼けの中に彼女が現れた。
例のごとくガハガハと笑い、大きな手をブンブンと勢い良く振る元気な姿が。

