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安心して走れる山手トンネル 山手トンネルは、5号池袋線・4号新宿線・3号渋谷線との分合流や数カ所の出入口が輻輳する長大トンネルです。それだけに、安全で快適なドライブを支援する設備・技術も数々取り入れられています。今回は、その中でも山手トンネルの防災安全対策についてご紹介します。

安全への取り組みが最大のテーマ

  • 熊谷健二課長
  • 蛍光灯とナトリウム灯

山手トンネルを走ると、白色と黄色の2種類の照明があることに気づくと思います。白は蛍光灯、黄色はナトリウム灯の明かりです。これは、自然光に近い蛍光灯でトンネル内の暗いイメージを払拭するとともに、出入口などの分合流のポイントにはナトリウム灯を追加することで明るさを増してドライバーに注意喚起をしているのです。また、照明は進行方側に向けて設置されていて、ドライバーの目に優しく前方視認性の高い設計にもなっています。
この照明設備に代表されるように、山手トンネル内にはお客様の安全・安心を第一に考えた設備が導入されています。トンネル用信号機、トンネル警報板、ラジオ再放送設備など走行中のドライバーに積極的に働きかける設備、テレビカメラや自動火災検知器などトンネル内を見守る機器、そして、もしものときに活躍する装置など、数々の防災安全対策が施されています。
「山手トンネルは、平成25年度完成予定の品川線を加えると、約18kmの長大トンネルとなります。分合流が多く、相当数の交通量が見込まれるトンネルです。それだけに、万が一の際にお客様の命を守る防災安全設備計画は、設計段階からの最大のテーマなのです」と語るのは、首都高のトンネル防災を担当する管制技術グループの熊谷健二課長です。

事故を未然に防ぐための工夫

  • 交通管制室とテレビカメラ
  • 大橋ジャンクション

「いちばん大切なのは、事故が起きないようにするための対策です。そのための設備や工夫にまず力を入れています。照明設備もその一つですし、車線逸脱を伝えるリブ付区画線やカーブ区間にはゼブラ板などを設置しています。また、約100m間隔でテレビカメラを設置して、常にトンネル内の状況を見守っています」(熊谷/以下同)
このトンネル防災システムには、走行状態の異常を自動的に判断する画像処理技術が組み込まれています。これによって、停止車両や低速車両などを即座に発見することができます。
また、現在建設中の大橋ジャンクションでは、方向表示看板や舗装路面を行き先別に色分けすることで、より安全な走行・分岐を誘導する計画です。「色による走行支援は首都高では初めての試みです。この他、カーブで見えにくい前方の渋滞状況を表示する渋滞末尾情報板や速度超過を知らせる表示板など、ドライバーの皆さんに安全走行を意識していただけるような設備と工夫を行っています」
それでも、事故の可能性がゼロになるわけではありません。万が一のときの対策も重要です。

もし、事故や車両故障によって火災が発生したら

  • 非常電話・消火器・泡消火栓と押ボタン式通報装置・トンネル用信号機・トンネル警報板・拡声放送スピーカ

仮に、山手トンネルで車両火災が発生したと想定してみましょう。
「事故の発生はテレビカメラで即座に発見されます。ドライバーの方が押ボタン式通報装置(約50m間隔)や非常電話(約100m間隔)で通報することもできます。また、約25mごとに設置されている自動火災検知器も火災の発生を検知します」
これらの情報をもとに、交通管制室で24時間監視する管制員が迅速に対応していきます。まず、後続の車の安全を確保するために、坑口フラッシング(点滅灯)、トンネル各所のトンネル用信号機や警報板により火災の発生をドライバーにお知らせし、車両の停止、進入の防止や出口への誘導を行うとともに、ラジオ再放送設備や拡声スピーカーによりすみやかに避難誘導を行います。同時に、パトロール隊(バイク隊・パトロールカー)が急行し、警察・消防等への要請も行います。
「拡声放送スピーカーは約200mの間隔で設置されていますが、複数のスピーカーの音がズレてエコーがかかり、聞きづらくなる現象を緩和するための時間遅延技術が採用されています。道路トンネルでは初めて使用される技術です。導入に際しては、実際にどのように聞こえるのか、メッセージの内容や声の質、話すスピードなどの実験を重ね、最も効果的な音質を決めていきました」
一方、事故の現場にいるときはどうすればいいのでしょうか。「消火器・泡消火栓を約50m間隔で設置していますので、安全を確保できる範囲での初期消火をお願いします。もし、危険だと思われたらすぐに避難してください」
火災時のいちばんの危険は、煙にまかれることです。山手トンネルでは、横流方式の排気システムを導入していますが、これは、トンネル下部の吸気口から新鮮な空気を送り込み、上部の換気口から排出するという仕組みです。非常時にこの換気システムをコントロールすることで、路面上1.5m程は新鮮な空気層を保持し、利用者が安全に避難できる時間を確保します。「350m以内に設置されている非常口内に入れば、煙が侵入することもなく安全ですので、あとは避難通路内の指示にしたがってゆっくりと避難してください」

パトロール隊(バイク隊)

どんどん進化する防災安全対策

山手トンネルではこれまで事故火災が一度発生しています。「幸い、現場にいらしたドライバーの方々のご協力もあって初期消火ができ、最小限の被害で済みました。シナリオどおりの対応もできたと思います」
様々な条件でのシミュレーションや実験を繰り返して導入された設備ですが、現実の事故に遭遇してもその効果を十分に発揮することができたのです。
このように二重三重の防災安全対策が導入されている山手トンネルですが、その技術はさらに進化しつつあります。ITS(高度道路交通システム)の一環で、スポット通信サービスと言われるDSRCによる新たなインフラ協調型システムを導入し、カーナビモニターに画像や音声によって安全支援情報を提供することで、より安全な運転をサポートする取り組みを社会実験としてスタートさせているのです。
「防災安全対策に終わりはありません。常に最新で安全性の高い設備や方策を追求していきたいと考えています。また、ドライバーの皆さんにも防災設備や対策を知っていただき、もしもの時も安心して行動できるよう、広報活動にも力を入れていきたいと思います」
トンネルは、無意識のうちに不安感や緊張感を強いられるものです。その不安を払拭して快適なドライブができるよう、様々な設備が皆さんの運転を見守っているのです。


2010年1月8日 掲載