ユニークな構造と技術
春には桜が咲き誇り、花見の人々で賑わう目黒川。その桜並木に沿うように建つコンクリートの建造物が大橋ジャンクションです。国立競技場とほぼ同じ大きさでありながらあまり圧迫感を感じないのは、リブ状の表面加工や上部に疑似窓を設けるなど、ボリューム感を和らげる工夫が施されているためです。その風貌も規模も、ちょうどローマのコロッセオを思わせます。この構造体の中に、山手トンネルと高速3号渋谷線とを結ぶ4層構造のループ状道路と大橋換気所が設けられているのです。従来のジャンクションとは一線を画すこの大橋ジャンクション。ユニークな構造の理由の一つとなったのが、最大約70mもの高低差の解消でした。
「地下約40mにある山手トンネルと、地上30mを走る高速3号渋谷線を接続するために、内回り・外回りとも一周400mのループを2周する螺旋構造のジャンクションになっています。2路線が十字交差するフルジャンクションでありながら、とてもコンパクトな設計です」と説明するのは、大橋建設事務所の佐伯 公所長です。
「そのコンパクトさの中で、多種多様な工事を短期間で安全に実施していくことには大変苦労しました。営業中の高速3号線、周囲を通る山手通りや国道246号線などの交通を確保しながらの施工であり、また、高度な技術や新工法も採用されるなど、常に現場での正しい状況判断が求められる工事です」(佐伯所長、以下同)。
重量約2,100トンのシールドマシンを縦方向にUターンして2本のトンネルを掘進する工法や、今後品川線への延伸のために大橋ジャンクションとの分岐・合流部のシールドトンネルを切り開いて拡幅する「非開削切開き工法」の採用などはまさにその一例です。
大橋“グリーン”ジャンクション
この大橋ジャンクションは、別名「大橋“グリーン”ジャンクション」として、環境対策と緑化に力をいれています。
「ジャンクションを覆蓋することによって、排気ガスや交通騒音の周辺環境への影響を低減しています。一方、トンネルおよびループ内の換気を行う必要がありますので、最新のSPM除去装置(浮遊粒子物質を80%以上除去)と低濃度脱硝設備(NO2を90%以上除去)を設置した大橋換気所を設けたのです」
また、ループ部分の屋上は、目黒区と連携して「目黒天空の庭」をコンセプトとした屋上公園が整備されます。人と自然との共生をキーワードにした回遊式の公園で、四季折々の自然や和の文化が楽しめます。一方、換気所の屋上には、水田や雑木林など、かつての目黒川周辺の原風景を再現した緑化を検討しています。
「ループの壁面は、オオイタビ(常緑のツル性植物)による緑化を行います。現在の外観もなかなか好評で、あまり厚化粧しなくていい、という有識者のアドバイスもあり、成長は遅いのですが手間もかからず、品格ある景観を作り出す植物として選ばれました」
この他、遮音壁や騒音を低減する高機能舗装、低VOC(光化学スモッグの発生原因となる揮発性有機化合物)塗装なども採用。そして何より、中央環状線山手トンネル(3号渋谷線〜4号新宿線)の開通によって都心を通過する交通量が分散し、ピーク時の渋滞が約3割減少する計算ですが、そのスムーズな交通の実現によって、年間で代々木公園60個分の森に相当する二酸化炭素の排出削減につながると試算されているのです。
みち・まち・再開発一体プロジェクト
大橋ジャンクションのもう一つの特徴が、地元の住民と一体となった街づくりの推進です。「現状の都市計画が策定された平成11年以降、地元では街づくり研究会や協議会が次々と設立されるなど、再開発の気運が高まりました。私たちも地元の方々と膝を割って話し合い、一緒になって勉強を行い、街とジャンクションが一体となる再開発を目指してきました。「大橋“グリーン”ジャンクション」という位置づけも、そうした中から生まれてきた考え方だったのです」
既存の街が丸ごと一新される規模の再開発でしたが、地元の皆様の協力をいただき、平成24年のまち開きに向けた取り組みは着実に進んでいます。
「新しく生まれ変わる街も少しずつ見え始めてきました。このように、ジャンクションの建設と街の再開発が一体で進んでいくことは初めてのことです。それだけに、公共事業の在り方としても今後の先駆的な事例となる工事ではないでしょうか。10年、30年、50年と年月が経ち、この街の子供たちが成人し大人になって、ループ外壁も成長したオオイタビによって緑に覆われていく。そんな、人々ともに歴史を刻んでいくジャンクションになればいいなと思っています」
2010年2月5日 掲載










