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安全・長寿命、首都高のメンテナンス

損傷が軽いうちに発見し補修

  • 高速上巡回点検/工事現場や事故現場の最後尾に配置される標識車。追突の衝撃を和らげる衝撃吸収装置が備えられている。

首都高を走っていると、時々黄色い車を見かけます。首都高の状態を日々点検するパトロール車や、補修工事を行う維持作業車です。首都高は、1962年に1号羽田線の一部が開通して以来、まもなく半世紀が経とうとしています。1日に110万台を越えるお客様に利用されていますが、長年の使用による疲労や事故等によって生じる傷みもあります。
それらの変化を損傷が軽いうちに発見し、的確な補修を行うことで、より長く安全にご利用いただけるようにすることが、首都高の保全活動の目的です。そのために、巡回点検を行うパトロール車と、構造物の補修・補強を行う維持作業車が日々活躍しているのです。
「パトロール車を使って行われる巡回点検では、車上から目視で構造物に異変や損傷がないかをチェックします。1路線につき、1週間に2〜3回のペースで巡回しています」と説明するのは、神奈川管理局の遠山雄一部長です。高速道路を走行する車上からの目視点検!? 大変難しそうですが、実はちょっとしたポイントがあります。
「過去の点検・補修記録をもとに、チェックすべき箇所をある程度絞り込みます。さらに、今日は路面、次回は遮音壁というように毎回視点を変えながら点検を行うことで、小さな異常も見逃さないのです」
また、1年に1回程度路面撮影車等による詳細計測を行い、さらに5年に1回、高速道路上を歩いて目視点検を実施しています。これらの点検結果をもとに、緊急対応が必要な「A」から異常なしの「D」まで4段階で評価。その情報に基づいて補修・補強の作業を計画的に行っていくのです。


仮設足場での接近点検/高所作業車を使用したトンネル内の接近点検

意外と厄介な鳥の巣

  • 緊急対応車と多彩な装備/回収された落下物

では、具体的にどのような維持・補修作業を行っているのでしょうか。「緊急に対応が必要な損傷とは、落下してお客様等に被害をもたらすようなものから、事故によるガードレールの破損、路面の穴など、走行に危険を及ぼす可能性があるものです。連絡が入ると、緊急応急対応車が直ちに急行します」
緊急対応車には、どのような状況にも対応できるように、実に様々な道具を用意しています。路面を緊急補修するための舗装資材や転圧機、事故で流れ出たオイルを処理するオイル吸収剤、レンチやバールなどの各種工具、清掃用具、発電機……。中には何のために使用するのだろうかと首をかしげてしまうものもあります。
例えば、牧場で干し草を集めるために使う大きなホークのような農具。「実際に道路上に散乱した干し草を集めるために使いました」と補修工事を指揮する首都高メンテナンス神奈川株式会社の鈴木次長。さらに、動物の捕獲用と思われる網は、「首都高に迷い込んだり、車から落ちたりした犬や猫を助けることも少なくないんですよ」とのこと。
一方、緊急ではないけれども補修を要するBランクの損傷に対しては、関係者が定期的に一堂に会し損傷の評価を行い、優先順位をつけて補修工事を行います。実際、4月後半のある1週間で、神奈川管理局内だけで771件もの工事がありました。もちろん、1箇所の交通規制で複数の工事やメンテナンスを同時に行うなど、効率的な工事を行っているのですが、その数は首都高全体で見るとさらに膨大になります。


  • 集中工事

「首都高には、高架橋、トンネル、土工など、多様で大量の構造物があります。また、横浜ベイブリッジに代表される大規模で特殊なものも少なくありません。メンテナンスの方法も構造物によって異なるので、実に多彩なのです。例えば路面では、舗装のひび割れや轍(わだち)の修復。橋梁では、気温の変化による道路の伸縮を緩和する伸縮継ぎ手の損傷の修理などを高い頻度で行っています」
その他、橋脚や擁壁のコンクリートのひび割れ、トンネル壁面のタイルの浮き、遮音壁や標識など道路付属物の損傷など多岐にわたります。それらの補修を担当しているのが、「多技能工」と呼ばれる保全要員です。
「通行規制をしての工事は時間との戦いです。限られた時間内に多様な工事を完遂するメンテナンス・チームは、どのような工事も担当できる熟練職人の集団です。痛んだ舗装のハツリから、型枠組み、コンクリート施工、タイル張りなど土木構造物に関してはひと通りプロの工事ができますからね。また、1回の規制の中で、複数の工事やメンテナンスを同時に実施しますから、工事の手順や担当者の連携も重要です。事前の情報収集と打ち合わせ、必要資材の見極めも大切になります」
時には、意外な保全作業もあります。「橋桁の鳩の巣を除去するために出動することもあります。鳩の糞が積もって鋼材を腐食してしまうのです。また、カラスの巣にはワイヤーハンガーなどが混じっていることが多く、落下すると事故の原因にもなりかねないので、見つけたら取り除きます。鳥の巣対策のために40~50m級の高所作業車が用意されることもありますよ」

雨の日は事故が多発

  • 滑り止めカラー舗装

首都高の維持・補修は、首都高を安全に利用していただくための大切な作業です。その一方で首都高では、お客様の安全運転をサポートする施設整備や活動も行っています。とくに雨の日は晴天時の5倍の事故が発生しているというデータもあります。
そこで、事故の多いカーブなどでは、「事故多発 減速」のLED表示と、回転灯による注意喚起を行っているほか、雨天時にはパトロールカーを配備することもあります。また、「薄層舗装」によって車に振動を与え減速を誘導する工夫。水をすばやく吸収する高機能舗装や、滑りにくい路面文字などのスリップ対策も行っています。
「風の影響も無視できません。とくに神奈川エリアは風が強く落下物による障害も少なくありません。風を意識してもらうため、吹流しを設置するほか、路線バスの後部に落下物事故を防ぐための広告を掲示しています。でも、最も大切なのは荷物をしっかりと固定してもらうことです。お客様の意識を高めてもらうために、パーキングエリアで落下物を展示するなどの注意喚起をうながす運動も行っています。これから雨の季節になります。お客様もいつも以上にスピードに注意して、安全運転をお願い致します」
このように首都高では、お客様に安全に走行していただけるよう、きめ細かな点検や補修・補強を行うとともに、走行を支援する設備の充実を図っています。
「首都高は誕生しておよそ50年が経過しましたが、その先さらに50年ご利用いただけるよう、計画的なメンテナンスを行っていきます。単に補修・補強するだけでなく、使い勝手の悪いところを直し、より安全・快適にご利用いただける道路となるような技術や工夫も取り入れています。常に走りやすさや安心を感じていただけるようなメンテナンスを実施していきたいと考えています」

右から神奈川管理局の遠山部長、橋などの補修工事を行う首都高メンテナンス神奈川株式会社の後藤さん、福島さん、鈴木さん

2010年5月28日 掲載