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大橋ジャンクションからイカの耳!?まで、首都高のグリーン化計画

溶岩で植物を育てる

  • 西東京管理局・石井部長

青々と茂る草木の緑が目に優しい季節です。コンクリートと鉄の構造物に囲まれ無機質に思われがちな首都高ですが、意外な場所で植物が育ち、束の間の安らぎを与えているのをご存知でしょうか。通称「イカの耳」もそうした場所の一つです。
イカの耳とは、将来の新規路線や出入口との接続を想定して拡幅されている部分です。上から見るとちょうどイカの耳に似ていることから、そう呼ばれています。5号池袋線の飯田橋付近にもこのイカの耳があります。環境対策と景観向上の一環として、ここで緑化が進められているのです。ただ、場所は高架橋の上。植物にとっては乾燥が激しく風も強い過酷な条件です。また、水遣りや剪定などのメンテナンスも難しい場所です。
「そこで、土の代わりに小さい溶岩を敷き詰め、壁面部には溶岩パネルを用いました。溶岩には大小無数の穴があり、保水性が高くミネラルを供給する働きがあります。また、風や車の風圧による飛散の心配がなく、雨で流れ出ることもありません」と説明するのは、西東京管理局の石井信隆部長です。

植えられているのはローズマリー、ワイヤープランツ、タマシダ、セダムなど乾燥に強くメンテナンスの手間がかからない植物です。「およそ1年半が経過しましたが、環境に適応した植物が元気に育っていますよ」(石井部長 以下同)
一方、西新宿ジャンクション付近では、緑の高架橋ができつつあります。山手トンネルから4号新宿線の高架橋に接続する区間の一部で街路側の桁側面の緑化を行っているのです。「山手通りの上になるので、安全性と維持管理の容易さを考慮して、プランターと壁面パネルを一体化させた『緑化パネル』を採用しています。植物は濃いグリーンが美しく手間もかからないヘデラです。まだ試験的な試みですが、沿道の方に少しでも潤いを感じて頂ければうれしいですね」

5号池袋線・飯田橋カーブ拡幅部分緑化/西新宿ジャンクション桁緑化

壁面を緑で覆う

  • 都心環状線・銀座付近壁面緑化(試験施工)

さらに新しい緑化計画も進行中です。都心環状線の銀座付近の壁面緑化です。
「ここは、首都高上に橋が架かっていることでもおわかりでしょうが、もともと川(築地川)が流れていたところです。両側をコンクリートの壁で挟まれ、圧迫感を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。この壁を緑化することで、お客様の緊張をすこしでも和らげられればと考えています」
狭い空間でいかに安全な緑化を実現するかがポイントです。排気ガスや交通風といった環境面だけでなく、事故などもしもの時の影響や対応策も考える必要があります。「いくつかの工法を検討し実験を行った結果、つる植物を上から垂らす方法が適していると判断しました。掘割の上部に植栽プランターを設置し、そこから常緑のつる植物ヘデラを垂らします。壁面にヤシガラでできた基盤材とネット状の補助材を取り付けるのですが、周辺住民の方々に配慮して、吸音材を貼り付けたタイプも採用して交通騒音の減少も図っていきます。ヘデラが成長すればそれ自体に吸音性がありますから、ダブルの効果が期待できます」
今年度は新橋演舞場近くの釆女橋〜千代橋間で施工します。引き続き同様の取組みを進めていきます。これまで殺風景だった都心環状線が、緑のトンネルになる日も遠くないかもしれません。
「昨今の車の性能向上やエコカーの登場で排気ガスが少なくなり、環境的には良くなっています。工夫を凝らせば、様々な植物が育つようになりました。安心して走行できる首都高をつくることが保全・整備の基本ですが、少しずつ緑も増やしながら、清潔できれいな『品格のある首都高』をつくっていきたいと考えています」


緑の多いパーキングエリアへ

  • 代々木パーキングエリア壁面の緑化/代々木パーキングエリア屋上の緑化

首都高のパーキングエリアでも、積極的に緑を増やす取り組みを行っています。都心の限られたスペースですが、壁面緑化や屋上緑化など、工夫のしどころはたくさんあります。例えば、代々木パーキングエリアでは、屋上にセダムやイワダレソウが植えられ、休憩所室内の温度上昇を防ぐ役割も担っています。

  • 大橋ジャンクション完成予想図

駐車場の壁面には溶岩パネルが設置され、オオイタビ、ワイヤープランツ、タマシダなどの植物が元気に育っています。
「代々木パーキングエリアは、緑化だけでなく、遮熱性舗装、太陽光と風力を利用するハイブリッド発電設備などを採用したエコ・パーキングエリアです。その他のパーキングエリアも、それぞれの特性に合った緑化や環境への取り組みを進めています」
こうした、首都高の環境への取組みをたくさん注ぎ込んだのが、大橋ジャンクション、別名「大橋“グリーン”ジャンクション」です。ここでは、目黒区と連携して「目黒天空の庭」をコンセプトとした屋上公園が整備されます。人と自然との共生をキーワードにした回遊式の公園で、四季折々の自然や和の文化が楽しめます。また、ループ内に設けられている換気所の屋上では、水田や雑木林など、かつての目黒川周辺の原風景を再現した緑化空間を整備。ループ壁面の緑化にも取り組んでいきます。


生態系をまもるビオトープ

  • さいたま新都心線・見沼たんぼ区域

本格的なビオトープも整備しています。さいたま新都心線の高架下を活用した「見沼たんぼ首都高ビオトープ」です。
「見沼たんぼ」は、首都近郊に残された希少な大規模緑地です。田畑、雑木林、川や用水路からなる緑地には、多くの生き物を育む自然が今も残されています。首都高では、この見沼たんぼの一部を通るさいたま新都心線の高架下にビオトープを整備し、見沼たんぼ固有の生態系の保全に取り組んでいます。
「およそ1.7km、6.3haにおよぶエリアに、8ヵ所の池沼を設けて自然環境を復元しました。植栽は、近隣の自生林から種を採取し、地元の生産農家の方々に育成していただいた35種類2万本以上の樹木を植えています。また、カワセミの巣づくりの場となる土塁、チョウゲンボウやアオバズク用の巣箱、止まり木なども設置しました」
整備から3年半が経過しましたが、すぐ側を流れる芝川の堤防から遷移したチガヤなどの草本も生育し、青々とした緑の草原ができています。タヌキ、イタチなどの小動物、鳥類、数多くの昆虫類や両生類が住み着き、中には、ホンドキツネ、トウキョウダルマガエル、ギンイチモンジセセリなど絶滅の恐れのある生物も確認されるなど、改めて見沼たんぼの生物の多様性に驚かされます。
「地域の方々を対象とした観察会や大学生による実習も行っています。今後もモニタリングを継続して行い、外来種の駆除などの最小限の管理を行いながら、自然の営みを見守っていきたいと考えています」
「見沼たんぼ首都高ビオトープ」では、市民参加型のイベントなどを開催していく予定です。機会がありましたら、ぜひご参加ください。

見沼たんぼ首都高ビオトープ/外来植物の駆除にあたる職員/地元の子どもたちを対象とした観察会

2010年6月25日 掲載