首都高速中央環状線は首都圏の道路3環状の一角を成しています。そのうち、中央環状線山手トンネルは渋谷・新宿・池袋を結ぶ11kmの路線であり、周辺環境への配慮から都市高速道路として初めて基本構造にトンネル構造を採用しました。トンネル構造としたことで、7箇所の地下換気所と高さ45mの換気塔を14本、山手通りの中央分離帯に建設、設計方針を「圧迫感の低減」「周辺景観との調和」「時の移り変わりに配慮」とし、排気部は一辺が3mの六角形平面で出隅部に面違いを設けました。さらに外壁面には斜めリブを設け、光と影の変化を与え、給気部は高さ5mの立方体としました。これらにより周辺にお住まいの方々や山手通りを通行する方々に末永く受け入れられるデザインを実現しました。
換気塔はその構造規模から沿道環境に与える影響が大きく、周辺住民の方々の立場に立った中景、近景、至近景といった地域からの視線だけでなく、遠景・走行車両からの連続景観としての視線も考慮しました。これらの視線を対象に圧迫感の低減や周辺景観との調和を図る上で、必然性のあるミニマム形状のプロポーションとし、さらに時代の変遷に追従する飽きの来ないデザインを提供することを目標としました。
「必要悪といえる困難な課題に対し、緻密なデザインで慎重に取り組んでいる点が評価できる。 換気塔そのものの存在否定論は多いが、作らざるを得ないものに対し「より良い」解答を求めた努力に讃辞を送りたい。 高架高速道路と比べれば、その答えは明らかである。」