RENEWAL

首都高リニューアルプロジェクト
羽田線(東品川・鮫洲)更新

う回路の構造
~細長く狭い現場で短期間での建設を可能とした構造~

 現場は京浜運河の護岸と東京モノレールに挟まれた狭く細長い場所に位置している。また、高速1号羽田線の当該区間の断面交通量は約7万台/日であり、首都高速道路や周辺の一般道路への交通影響を極力低減するため、長期の通行止めを行うことなく工事を行っている。

 そのため、交通を切り回すための2車線(幅員9.2m)のう回路の構築が必要となった。う回路を構築するために使用できる現場の幅は10m~20mと狭く、施工時の物流動線を確保する必要があった。また、最終的にう回路の撤去が必要であることも構造選定の条件となった。

う回路構造イメージ図
う回路構造

 さらに、東京五輪の円滑な開催に支障を与えないように、開催時には損傷が多い既設の高速1号羽田線は供用しない計画としていた。そのため、う回路建設の後に続く更新線の建設期間や物流動線を確保するための工事用道路設置期間を考慮すると、約1.9kmのう回路建設に与えられた期間は、2016年6月の工事着手から2017年9月の供用まで約16ヵ月間しかなかった。

スケジュール

 狭い現場条件で、「物流動線確保」と「急速施工」を実現できる構造として、鋼3径間連続パイルベント橋脚構造をう回路全体の約85%で採用した。この構造を採用することで建設するう回路直下も物流動線として使用可能となった。また、通常横1列に配置されるパイルベント橋脚の配置を2本×2列配置とすることで耐震性を確保した。さらに、現場での工程を短縮するために、工場でもう回路を造ろうという観点から、積極的なプレキャスト化を進めた。う回路の構造のうち、工場で製作したものは「パイルベント橋脚(鋼管杭,ピアキャップ)」「支承」「鋼鈑桁」「床版」「高欄」である。なお、鋼管杭は将来撤去可能な「回転杭」を採用している。

 また、「高耐震性パイルベント橋脚の開発及び全面的なプレキャスト化によるう回路高架橋の急速施工」については、平成30年度土木学会賞技術賞Ⅰグループを受賞している。(参考URL:https://www.jsce.or.jp/prize/prize_list/2_gijutu.shtml

う回路構造の諸元

構造名 構造形式 諸元
上部構造 鋼3径間連続鈑桁 全体の約85%が本構造。他にPC梁スラブ構造など
下部構造 パイルベント橋脚
(鋼管杭+ピアキャップ)
鋼管杭:回転杭。Φ1000~1400mm。厚さ11~24mm。杭長22~35mm
ピアキャップ:プレキャストPC構造。3部材で構成。
支承 ゴム支承 最大反力450kN~2700kN
床版 プレキャストRC床版 1枚当たりの厚さ210mm、幅9200mm、長さ1615mm
高欄 プレキャストRC高欄(EMC高欄) 1部材あたり厚さ250mm、長さ3980mm、高さ1059mm
高欄間、高欄と床版をボルト接合