RENEWAL

首都高リニューアルプロジェクト
羽田線(東品川・鮫洲)更新

鋼製橋脚の腐食耐久性向上のための工夫
~海上にある橋脚を塩分から守るために~

 東品川橋梁区間は京浜運河上に位置するため、海水面付近の橋脚は厳しい塩害環境に置かれることになる。本工事で構築する構造物は耐用年数100年を目指しており、橋脚を腐食から守るための対策が必要となった。

 ステンレスライニングとは、耐久性を高めたい部材に錆びにくいステンレス鋼を巻きつけて防食する工法であり、橋脚基部の海水飛沫部および水中部に採用した。水や酸素などの腐食因子が鋼製橋脚と接触しなくなることにより、耐食性が向上するだけでなく、ライフサイクルコストの低減なども期待できることから、重要度の高い港湾鋼構造物に使用されることが多く、羽田空港D滑走路のジャケットにも採用されている。首都高速道路においては、生麦JCT、小松川JCTに次ぐ3事例目であるが、本工事では26橋脚と一連の橋梁で採用される初めての事例であり、また、角形橋脚への採用は珍しい。
 ステンレスライニングの設置範囲はL.W.L(干潮位)-1m~H.W.L(満潮位)+1mとしている。使用する鋼材は、高耐久オーステナイト系ステンレス鋼に分類され、一般的なステンレス鋼(SUS304)と比べて1.5倍の耐久性を有するSUS312Lであり、板厚は羽田空港D滑走路のジャケットと同じ1.2mmである。

<橋脚基部のステンレスライニング設置状況図>

橋脚基部のステンレスライニング設置状況図
橋脚基部のステンレスライニング設置状況図

 また、橋脚の大気部においても、飛来塩分の影響を常時受けるため、重防食塗装に加えてAl-Mg合金溶射(金属溶射)を施し、100年以上の耐久性を確保している。金属溶射とは、鋼材より先に錆びる金属を溶かして吹き付けることで、鋼材表面に皮膜を形成し、防食する方法である。金属溶射を行うことで、海上の鋼構造物に使用される塗装よりもさらに膜厚を増加させた重防食塗装だけ施工する場合と比べて、4倍程度の耐食性を有する。

<Al-Mg金属溶射施工状況図>

Al-Mg金属溶射施工状況図
Al-Mg金属溶射施工状況図