ヒャダイン

Volume 3
ただの夜景なんてもう飽き飽き!
~輝きのインダストリアル夜景デート編~

さあ今日はどこへ行こう。僕は「アーバン」という言葉が大好きです。幼い頃に観たアニメ「美味しんぼ」のオープニング、中村由真さんの歌にのせて夜景の都会が映る大人っぽさ、はたまた屋上で香と語らいながら都会の風を感じる冴羽獠。そんな大人にいつかなるんだ、と信じてやまなかったけど気づけば美味しんぼ山岡も冴羽獠もすっかり年下になってしまった。いつ大人になるんだろう。そんなコンプレックスを吹き飛ばすがごとく今夜は夜景デートとしゃれこもう。

だからって高層ビルから眺める東京の夜景はもう飽き飽きだ。そんなの適当に六本木や西新宿の高級ホテルに入ったら速攻手に入る。彼女だってそんなベタ、のぞんでいない。てことで意表を突く夜景ドライブ、行っちゃうぞ!日が暮れたらアーバンの代名詞・首都高速に乗り込みおなじみレインボーブリッジへ。行くたびにイルミネーションの色が変わる橋は相変わらず素敵です。橋から見える汐留、逆サイドのお台場もアーバン丸出しです。BGMはドナルド・フェイゲンのアルバム「Nightfly」なんかかけちゃって。でも今回の目当ての橋はここじゃない。新木場出口で首都高を降りる。トラックや倉庫だらけの広い道をブーンと飛ばす。不思議顔の彼女「え、なにここ。」カーステレオからドナルドが小粋な歌声を届けてくれる。「あ、もうすぐ見えてくるから前見ててねー!」そういって僕は車のルーフトップをおもむろに開ける。すると目の前に現れたのは東京ゲートブリッジ!伏見稲荷大社の連続鳥居を思わせるような巨大なゲートがどんどんどんと連続して光っている。そのダイナミズムは他の橋の比じゃない。まるで空に吸い込まれるように橋を走っていく。「上見てごらん」と彼女にうながす僕。開いた天井を見上げると夜空と光るゲートがめくるめく世界。「風が気持ちいい!」と空を捕まえるように両手を上げる彼女の無邪気さに僕も思わず笑い出す。

長い橋を渡りきって少し過ぎたあたりにある公園の駐車場に車を停める。近くにある自動販売機で僕は水、彼女はミルクティーを買って。「こんなところに公園あるんだねー」なんて言ってた彼女が「え!すご!」と声を上げる。そう。頭の上を至近距離で飛行機が飛んでいくのだ。羽田空港の滑走路が目視できる距離にある城南島海浜公園。ひっきりなしに頭の上を飛行機が飛ぶ迫力に彼女も圧倒。光る飛行機の窓、滑走路の光、そして長く続くビーチライン。「こんな夜景、見たかった」とぎゅっとしてくる彼女。「今度はあの飛行機乗ってバリでも行きたいね」なんて話題も盛り上がる。今夜はインドネシア料理でも食べに行こうかな。

ま、実際はね。仕事に疲れて逃げ出したくなった時一人で城南島海浜公園でボーッとして「あー、ハワイ行きたい」ってブツブツ言ってるだけなんですけどね。そういう時はマジで声かけないでね、お願いします。

(次回は9月更新予定です)

PROFILEヒャダイン(音楽クリエイター)

1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。
3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。
様々なアーティストへ楽曲提供を行うとともに、自身もタレントとして活動する。

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