ヒャダイン

Volume 5
日本ってやっぱりいいね、あなたがいるから
~恋のフライト編~

さて。今日はどこへ行こう。とはいえ行き先は決まっているんです。そう。羽田空港へ。今日彼女が出張先のパリから帰ってくるのだ。東京の空港のもう一つなところって都心部から空港が遠いことだよなー。羽田でさえ最低30分はかかるからなあ。福岡とか近いんだよなー。迎えにいってやんなきゃいけないな、なんて言いながらレインボーブリッジを渡るんだけど、別にモノレールも電車もあるし迎えにいく必要なんてない。自分が単純に一秒でも早く逢いたいだけなんだな。パリのお土産話を楽しみにしながらセルジュ・ゲンズブールなんかBGMにしながら首都高で羽田へと向かう。羽田空港と書かれたトンネルに入ったらいつも心が躍るのはなぜだろう。今回に至っては自分が旅立つわけでもないのに空港に行くのはいつでもスペシャルな体験なのだ。

羽田空港に早く着きすぎたな。P4駐車場の充電スペースで電気自動車を充電させて少し空港散歩だ。展望デッキという表示を見つけて初めて出てみると、なんとも開放的なスペースで間近に飛行機を見られる。風が気持ちいいなあ。この風に乗って彼女も帰ってくるのだな。フライトって行く時より帰る時の方が早いのっておもしろいよなー。この風のおかげなのかもな。それとも、早く逢いたいと願う待ち人たちの想いがそうさせてるのかな、なんてロマンティックが発酵するようなことを考えてみたり。そうこうしてたら到着の時刻。「着いたよ」とLINEが入る。到着ゲートで外国人に紛れて待っていると少し疲れた君の顔。おーい、と手をふるとパァっと笑顔が咲く。おいおい。嬉しいかよ!とさらに心が躍るんだ。「ボンジュール」なんて挨拶したら「もうフランス語はこりごり」なんて疲れ顔。彼女のリュックをひょいっと持って車へと向かう。同じ場所同じ時間を歩いているのに、彼女にとっては久しぶりの東京。きっと少し見え方が違うんだろうなあ。疲れているのにマシンガンのごとく話す彼女のお土産話に相槌を打ちながら首都高アゲイン。レインボーブリッジを越えて、東京タワーが見えてくると「エッフェル塔も素敵だけど、やっぱり東京タワーだなぁ」と嬉しそうな君。いやいや、俺がいるからだろ?なんてニヤニヤしてたら見透かすように頬をつつく君。いやー、恋っていいなあ。
ええ。どれもこれも妄想デートですよ。何がボンジュールだよ。さ。フランスパンでもくおうっと。

(次回は11月更新予定です)

PROFILEヒャダイン(音楽クリエイター)

1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。
3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。
様々なアーティストへ楽曲提供を行うとともに、自身もタレントとして活動する。

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