Volume 1
これぞ青春!片想い未遂!
車は首都高を新宿方面に向かっていた。
「あれ?もしかしてみんな寝てる?」
急に静かになった後部座席の3人は、お互い絶妙に支えあいながら爆睡してた。
「さっきまであんな元気だったのに?!」隣の運転席で、彼は笑った。
あれは大学1年生の時。
私たちは男2女3の5人組。英語のクラスが一緒だったの。
正直すごく仲良かったわけじゃない。でもある日授業前に話してたら、男2の内の1人が実はお金持ちで、親が河口湖に別荘持ってる、なんて急に言うもんだから、女3達は「そういうの早く言ってよ!」と大激怒(笑)
怒った時の女のパワーってすごくて、その週の週末には別荘に押しかけることになった。
私、異性と旅行なんて初めてで、急に男子2人を値踏みしちゃったりして(笑)
厳正な審査の結果!面倒なレンタカーの手続きや往復の車の運転を率先する姿、富士急ハイランドで思いっきりはしゃいで楽しむ姿勢に大量ポイントが加算され、男子Bクンに軍配が上がりました!
実家がお金持ちなのを自分からは言わなかったAクンも捨てがたかったけど!
さて楽しい時間はすぐに過ぎて、あっという間に帰り道。
彼の隣の助手席をなんとしてもゲットしたい私。自身のぽっちゃり体形を活かし、必殺技「はい!痩せてる人後ろ!」をくり出した。
「いやあんたの方が痩せてるじゃん!」という敵からの反撃もなく、すんなり彼の隣をゲット。ちょっと!あんたたち!(笑)
でも、敵のおかげでこうして彼と2人きりの時間ができた。お世辞を言わない友情に感謝です。
後ろを起こさないように小声で話す2人だけの時間は楽しくて、ドキドキで。
あーもうすぐ新宿に着いちゃう(泣)
すると「埼玉から通ってるんだっけ?」と彼。
「え?あ、うん。戸田。」
そんな話いつしたっけ?
何気ない会話を覚えてくれてる…、1ポイント!
あれ?ポイントあげてる場合じゃない!
「え?ちょっと!新宿はまっすぐだよ??」
「いいからいいから!」
車は左折し埼玉方面に。
高速の下の景色が、少しずつ人が住んでる街の雰囲気に変わっていって、荒川を渡って、車は戸田南で降りた。
戸田南!家族で旅行行く時使うとこ!
戸田南の文字を見ると、帰ってきたなーって思って、お母さんが「お父さん運転お疲れ様でした」って「ここで気を抜いて事故起こさないようにしなきゃね」って言うとこ!
「家まで送るよ。」
まじ?かっこ良すぎるんだけど!!!!!
私だけ先に降りるのは正直寂しいけど、実はちょっと眠くもあったし、お言葉に甘えさせてもらうことに。
「ウチは住宅街の細い一方通行の道に面していてちょっとわかりにくいから、車が止めやすそうなところで下りるね」と小さな小さな良い女アピールをし、またねと別れた。
あとで聞いたら、全員家まで送ってくれたんだって!優しすぎる!
100ポイントなんだけど!
で、これもあとで聞いたんだけど、彼女いたんだって。
ま、別にそんなに好きだったわけじゃないし。
その、2人の男子のうちだったらどっち良いかってだけの話だし。
あ、あれ?
てかそもそも私、大学の時友達1人もいなかったんだった。あーあ。
(次回は1月更新予定です)
PROFILE山﨑ケイ(お笑い芸人)
1982年千葉県生まれ。2013年、相方の山添寛とコンビ「相席スタート」を結成し、男女の日常をネタにしたコントや漫才で人気を博す。M-1グランプリ2016ファイナリスト。「ちょうどいいブス」としてメディア出演多数。
現在、YouTubeチャンネル【相席YouTube】を開設中!
https://www.youtube.com/channel/UC8PClLM0It8xXOnNtB1vzOg