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首都高ドライブ心理ハック

Vol.04 運転 × 順応

連続走行でスピード感覚の誤認が起こる!?
「速度順応」を解説!

首都高心理ナビゲーター

ドライブ中、車窓の景色から見えるスピードや自分の運転感覚を手掛かりに、「今どれくらいの速度で走行しているか」を判断することがあると思います。しかし、そんな「主観的」な感覚も、スピードの出やすい高速道路などを長時間走行することで、低下してしまうことがあります。今回は、このような脳の「誤認」から起こる、危険な“順応”についてご紹介します。

「一般道に入ったとき、自車の走行スピードの速さにハッとした……」こんな経験はありませんか?

高速道路などを走ったあと、その感覚のまま一般道に入ったとき、思ったよりスピードが出ていて、慌ててメーターを見て減速した……こんな経験はありませんか?こんなとき、体感より10〜20 kmも速く走行していた……なんてことも。これは、一定のスピードを出した状態で比較的長い時間を走ったあとに主観的な速度感覚が鈍ってしまう……という「速度順応」と呼ばれる、脳が引き起こす錯覚による現象で、特に高速道路から一般道へ合流するときに起こりうる、注意が必要な現象です。

同じ動きを持続的に見ることで、脳は「誤認」を起こす?

「速度順応」と同様に、一定の「速度」に慣れることで脳が錯覚を起こす現象で、「運動残効」と呼ばれるものがあります。ドライブ中に交差点等で車を停止させたとき、自分が後ろに下がっていくように感じたことはありませんか?これは、「一方向に動く対象をぼんやりと見続けたあと、それが静止したとき、今までと反対方向に動いているように見える」現象で、人が滝を一定時間眺めたときにも起こることから、別名「滝の錯視(waterfall illusion)」とも呼ばれています。このように、脳が一定の速度による「刺激」を受けた際に起こる順応や残効は、運転する上で錯覚を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

対処法は「声と時間」?“順応”の誤認から脳が目覚める “掛け声”とは?

「速度順応」等によりスピード感覚が鈍っている状態での走行は、前の車との適切な車間距離の感覚を失うことにもつながり、思わぬ事故や渋滞の原因にもなり得ます。そのようなとき十分な車間距離を確保するために有効なのが、「ゼロイチ、ゼロニ*」と「ゼロ」を付けて「車間時間」をゆっくりと数えること。車間時間は「2秒」をキープすることが推奨されているためで、前を走る車が標識や照明などの目標物を通過してから2秒数えたタイミングで、自分の車がその目標物を通過すれば、適切な車間距離だと確認できる、というものです。みなさんも、ぜひ日頃から「ゼロイチ、ゼロニ」と声を出して唱えることで、日々の安全走行にぜひ役立ててください。

*:「0102(ゼロイチゼロニ)」運動…埼玉県警が提唱し広まった運動。
※積雪、凍結、雨天時等は、上記以上の車間距離が必要になります。状況や天候に応じた対応で、日々の安全な走行に努めましょう。

<この記事の監修者>

大阪国際大学 人間健康科学科

山口 直範 教授

大阪国際大学人間健康科学科。専門は交通心理学、臨床発達心理学。元オートバイロードレース国際A級ライダーで、その経験を生かし、国内外でバイクの安全対策や安全教育に取り組んでいる。また、近年では臨床発達心理士の保育経験を生かしJICAやIATSSの研究員として、ASEAN諸国の子どもの交通安全教育にも尽力している。

著書:『子どものための交通安全教育入門―心理学からのアプローチ―(共著)』 (ナカニシヤ出版)

次回の首都高ドライブ心理ハックは6月21日更新予定です

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