TOP / 首都高パラレルワールド / VOL05.『つまずく』〜芝浦PA編~

Column

首都高パラレルワールド

ジャルジャル福徳さんが贈るショートショート

『つまずく』
〜芝浦PA編~

スミレがつまずいた。

日曜日、スミレとお台場へ。
夕方過ぎに、「お台場って案外行くところないね」と、帰路につくことにした。
〈台場〉から首都高に入り、〈荏原〉を出て、数分走れば、僕らが同棲している自宅に着く。空いていれば、ほんの20分のルート。
にもかかわらず、スミレが、首都高に入ってすぐに、〈P芝浦〉の標識を見つけて、「寄りたい」と言った。

「え? なんのために? トイレ?」
「パーキングエリアとかサービスエリアって楽しいじゃん。寄ろうよ」
面倒だと思った。
でも、これっぽっちのことでスミレに幸せを与えられるのなら、付き合ってもいいかと考え直した。
「わかった」
「いぇーい」
本線から左に入り、芝浦PAへ。
もぐりこむようなヘアピンカーブを越えると、本線の下に芝浦PAはあった。
「ちっちゃ!」
スミレが大袈裟に言った。

「もしかして、店が立ち並んでるようなのを想像してた?」
「うん。ここ、自動販売機しかない系のところだね。無人の。まぁでも一応、寄ってやるか」
「何様だよ」
おどけるスミレ。
指摘する僕。
結果、おどける僕ら。
車から降りて、僕の前を歩くスミレ。

スロープではなく、10段くらいの小さな階段から建物に向かう。
5段目くらいだろうか。
スミレがつまずいた。
片手を地面につき転倒は防いだ。そして何事もなかったかのように、再び階段を上がるスミレ。
「つまずいたんだから、なんかリアクションしろよ」
「あんなの余裕だし。おい、行くぞ」
「だから何様だよ」
おどけるスミレ。
指摘する僕。
結果、おどける僕ら。
僕が1番好きな僕ら。

建物内には自動販売機が何台もあり、窓からは海が一望できる絶景──ではなく、海がチラつく程度の景色だった。
「収穫なし。さぁ帰ろっか」
あっさりとした声を出すスミレに、少しでも収穫を与えたくなり、僕は伝えた。
「今のおれらって、つまづいても笑っていられるよな?」
「うん」
「あのさー、つまずいたら心配になるときまでずっと一緒にいような」
「……うん。いいだろう」
「だから、何様だよ」

おどけるスミレ。
指摘する僕。
結果、照れてる僕ら。

「首都高じゃらん」に掲載していたアナザーストーリーはこちら!

『笑いジワ』
〜天現寺出口渋滞編〜

スミレが笑った。

日曜日、スミレとお台場へ。
夕方過ぎに、「お台場って案外行くところないね」と、帰路につくことにした。
〈台場〉から首都高に入り、〈荏原〉を出て、数分走れば、僕らが同棲している自宅に着く。空いていれば、ほんの20分のルート。
にもかかわらず、スミレが、首都高に入ってすぐに、〈P芝浦〉の標識を見つけて、「寄りたい」と言った。
「え? なんのために? トイレ?」
「パーキングエリアとかサービスエリアって楽しいじゃん。寄ろうよ」
面倒だと思った。
「真っ直ぐ帰るぞ」
「ケチ」
軽くすねるスミレと芝浦PAを横目に台場線を走り抜けた。
浜崎ジャンクションを過ぎ、一ノ橋ジャンクションで目黒線下りに合流。
二車線はスムーズに車が流れていた。突如、左車線のみに渋滞が発生。右車線を走る僕らには影響がなかった。
「なんで左車線だけ渋滞してんの?」
「なんでだろ」
「ねぇ、私たちもこの渋滞に並ぼうよ」
「は? なんで?」
「楽しそうじゃん」
きっとスミレはどこかに立ち寄りたいだけ。これっぽっちのことで、スミレに幸せを与えられるのなら、この不思議な遊びに付き合うべきだと思い、渋滞のある左車線の列に入った。

完全停止する車。
しばらくすると50メートルくらい動き、また完全停止する車。それを繰り返す。
そこで〈天現寺出口〉の標識を見つけて気が付いた。
「スミレ、これ、ただの〈天現寺〉で下りる人たちの渋滞だわ。首都高下りてすぐに信号があるんだよ。そのせいでここよく渋滞できるんだった」
「首都高を出る車でつっかえてるんだ」
「そうゆうこと」
「便秘みたいだね」
「なんだその例え」
おどけるスミレ。
指摘する僕。
結果、おどける僕ら。
「でも、便じゃなくて、車だから、便秘じゃなくて、〈車〉と〈秘〉で、しゃぴだ」
「しゃぴ?」
「うん、しゃぴ。〈車〉と〈秘〉で〈車秘〉で〈しゃぴ〉」
「しゃぴ」
「うん、しゃぴ。しゃぴって、みょうに可愛ね」
完全停止している車内で僕らは顔を見合わせて笑った。
スミレの目元にできる笑いジワに見とれた僕。
「なぁスミレ」
「なに?」
「笑っていなくても目にシワがあるときまでずっと一緒にいような」
「……うん。いいだろう」
「何様だよ」
おどけるスミレ。
指摘する僕。
結果、照れてる僕ら。

PROFILE

ジャルジャル
福徳秀介

1983年兵庫県⽣まれ。2003年、⾼校時代ラグビー部の仲間だった後藤淳平とお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。キングオブコント2020優勝。愛⾞はフォルクスワーゲン タイプ2。

1983年兵庫県⽣まれ。2003年、⾼校時代ラグビー部の仲間だった後藤淳平とお笑いコンビ「ジャルジャル」を結成。キングオブコント2020優勝。愛⾞はフォルクスワーゲン タイプ2。

アナザーストーリーは「⾸都⾼じゃらん」をご覧ください!

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首都高PAのほか、海ほたるなど関東近郊のPAや道の駅、都内駐車場などで配布しております。

※その他、東京近郊の商業施設や⾃治体に設置中

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