首都高グループ(以下、首都高)は、カーボンニュートラルに向けた取り組みや生物多様性の保全に努め、次世代の豊かな暮らしの実現を目指しています。
Vol.2となる今回は、首都高が進めるカーボンニュートラルの取り組みについてご紹介します。
はじめに:なぜ今、道路の脱炭素化が必要なのか
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。さらに、中間目標として、「2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減する(さらに50%削減の高みを目指す=カーボンハーフ)」という高い目標を設定しました。この国の目標を受け、脱炭素に向けた動きが急速に進んでいます。なかでも道路関連分野は、国内CO2排出量の約18%を占めており、道路施策の目標設定の具体化や施策内容の拡充など、脱炭素化の推進が急務となっています。
出典:国土交通省 道路分野の道路脱炭素化政策集ver2.0
カーボンニュートラルの基礎知識
カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、全体として差し引きゼロにすること」です。これを達成するには、発生源における排出削減を徹底した上で、緑化などによる吸収作用の保全や強化を組み合わせる必要があります。
温室効果ガス(CO2)の排出量は、「活動量(どれだけ使ったか)」×「排出係数(1単位あたりどれだけCO2が出るか)」によって算定されます。そのため、CO2の排出量を削減するために実施すべきアプローチは次の2つの軸に集約されます。
・電気や燃料の使用量(活動量)そのものを削減する(=省エネルギー施策)
・使用するエネルギーの排出係数をゼロに近づける(=再生可能エネルギーの調達施策)
▲カーボンニュートラルのイメージ 出典:環境省「カーボンニュートラルとは」
サプライチェーン全体で考える3つの「Scope」
また、企業の温室効果ガス排出量は、自社内における直接的な排出だけでなく、サプライチェーン全体(原材料調達から製造・物流・販売・廃棄)も対象として算定します。排出源は大きく3つの「Scope(スコープ)」に分類されます。
| Scope1 | 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 |
|---|---|
| Scope2 | 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 |
| Scope3 | Scope1、Scope2以外の間接排出 |
首都高の事業活動に置き換えると以下の図のようになります。
▲首都高におけるScope1~3
首都高におけるカーボンニュートラルに向けた指針の策定
■首都高カーボンニュートラル戦略の策定
こうした社会の動向を受け、首都高は持続可能な社会の実現に貢献するため、2022年3月に「首都高カーボンニュートラル戦略」を策定しました。同年5月には首都高グループ一丸となって2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。
道路インフラを最大限に活用するとともに、省エネルギーの徹底や再生可能エネルギーの導入、新技術の開発などを積極的に推進し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する姿勢を示しました。

■道路脱炭素化推進計画の策定
さらに、2025年の道路法改正に伴い、国土交通大臣が「道路脱炭素化基本方針(以下、基本方針)」を策定したことで、道路管理者が「道路脱炭素化推進計画」を作成し、数値目標や個別施策、具体的なロードマップを公表する枠組みが導入されました。
これを受け首都高は、基本方針をもとにしつつ、2022年に公表した「首都高カーボンニュートラル戦略」を取り込む形で、新たに「首都高速道路株式会社道路脱炭素化推進計画(以下、推進計画)」を2026年に公表しました。この推進計画の特徴は、道路から排出されるCO2を自社の事業活動による排出に伴う「道路管理分野」(Scope1・2)だけでなく、自らの事業活動に関連する他社の排出に伴う「道路整備分野」「道路利用分野」(Scope3)まで範囲を広げて整理している点にあります。
首都高が取り組む具体的な施策
ここからは首都高がカーボンニュートラルに向けて取り組んでいる具体的な施策についてご紹介します。
■LEDの導入
[道路照明]
従来の照明(水銀灯や高圧ナトリウム灯)から、省エネルギーで長寿命なLED照明への切り替えを進めています。消費電力を大幅に削減することで、地球温暖化の抑制に貢献しています。推進計画では、2030年度までに道路照明及びトンネル照明を100%LED化する目標を掲げています。

[景観照明]
レインボーブリッジをはじめとした大規模な橋梁の景観照明についてもLED化を進めており、ランドマークとしての役割と省エネルギー化の両立を図っています。また、年に数回、地球温暖化の防止に寄与するとともに、一人でも多くの皆さまの環境への配慮意識の向上を図ることを目的に、レインボーブリッジなどの長大橋にて照明を消灯する「ライトダウン」の取り組みも実施しています。
▲2026年7月ライトダウン実施の様子(筆者撮影)
■神奈川局の「脱炭素先行地域」への加入
みなとみらい21地区に位置する神奈川局社屋において、2025年2月に同地区が取り組む「脱炭素先行地域(※)」への参画を表明し、同年12月に正式に決定しました。
また、同年4月より神奈川局社屋で使用する「電力」及び冷暖房に使用する「熱」について再生可能エネルギープランを導入し、脱炭素化を実現しています。
(※)2050年カーボンニュートラルに向けて、環境省が公募し、2030年度までに「民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロ」などの要件を地域特性に応じて実現する地域。

■エコセーフ舗装
首都高には1日100万台以上ものお客さまにご利用いただいているため、走行する車両からのCO2排出をいかに減らすかが大きな課題です。そこで導入が進められているのが「エコセーフ舗装」です。
従来の舗装が持つ排水性や防音性を維持しつつ、路面のキメをより細かくすることで車両の燃費が改善されCO2排出量削減に直接つながります。推進計画では、新規路線への標準採用をはじめ、既存の道路についても2030年度までに50%、2040年度までに70%をエコセーフ舗装に置き換える目標を掲げています。

■緑化の推進
構造物の95%以上が高架橋やトンネルで占められている首都高では、ジャンクションやパーキングエリア、換気所などの植栽可能な限られたスペースを最大限に有効活用し、周辺環境との調和や維持管理性に優れた緑化を推進しています。



ジャンクション緑化の代表例として挙げられるのが、大橋ジャンクションの換気所屋上に整備した自然再生緑地「おおはし里の杜」です。おおはし里の杜につきましては、前回のvol.1にてご紹介しておりますのでご確認ください。
▲おおはし里の杜
また、都市部の道路空間を生かした自然共生の取り組み事例として、埼玉新都心線の高架下に整備している「見沼たんぼ首都高ビオトープ」も挙げられます。首都高では、高架によって生まれた高架下や周辺の敷地を活用し、地域本来の植物や水辺環境を備えた緑地を整備しています。
CO2吸収による削減効果だけではなく、道路空間を活用して緑地や生物の生育環境を整備・保全し、地域社会との共生を目指すことも首都高の環境への取り組みの一つとなっています。
▲見沼たんぼ首都高ビオトープ
▲エリア概要図
今回は、首都高が進めるカーボンニュートラルに向けた取り組みについてご紹介しました。
今後も首都高グループは持続可能な社会の実現に向けて、2050年カーボンニュートラルを目指していくとともに、安全・安心な道で、ひと・まち・くらしを未来につないでまいります。
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