ヒャダイン

Volume 6
傷心と期待の大黒PA
~最終回きちゃったよ編~

さて、今日はどこへ行こうか。いや、どこも行かない。当て所もなくとりあえず首都高にのって行ったことないところに行こう。君が好きだった東京タワーがある芝公園もなるべく景色を見ないように通り過ぎよう。いつもだったら必ず左折するレインボーブリッジへの分岐も右へ行こう。
この街は想い出が多すぎて困る。身勝手なもんでいいことばかり思い出しちゃうのだ。首都高で走ってても二人で行った中華街、羽田空港、夜景の公園、緑あふれるピクニック、まるで色褪せない4K映像のようにプレイバックされるんだ。
車内のBGMだって困ってしまう。だって僕のスマホのプレイリストは君の好きなアーティストで占領されているからだ。すっかり僕の好みも君色になってしまった。出会う前に聴いていた曲を聴いても居心地が悪いからとりあえずラジオをつけている。はは。カーステレオのAM音質、小さい頃のままでレトロだな。
いつもは後部座席に置いてたリュックは助手席。飲み物を取り出すのも楽でいいな。喉が渇いた時に限って君は居眠りしてたからなあ。サイドミラー見るたびに寝顔にクスッとしてたっけな。
行くあてもなく首都高を走っているけど、正直迷子の気分だ。どこにもぼくの居場所がないのだから。君と付き合ってから僕は趣味が無くなったんだ。ゲームも釣りもフットサルも興味がなくなった。僕の趣味は、君、だったんだな。
スマホにLINEの通知が。おいおい高速運転中だよ。それに君からのわけないし。家に帰ったらチェックしよう。いや、高速降りたらにするか。うーん。うーん。。。大黒パーキングエリアに車を停める。少し慌ててスマホをチェックする。必死かよ、俺。うん。やっぱりそうだよな。映画館からの公式LINEだ。陽気に絵文字多用しやがって。少し笑って車から出る。と、「おーい」と懐かしい声が。驚いた。高校の頃の彼女だ。突然の再会に二人テンションが上がる。夜灯に照らされる彼女の笑顔はあの頃ままだ。さっきまでのセンチメンタルはどこへ行った。新しい予感に胸を躍らせた瞬間、隣の戦車のようなハマーから男の子2人と旦那らしき猫背の男が彼女のそばへ。

はは、そんな人生はドラマチックじゃねえよな。彼女らに別れを告げ、先程の間が悪い公式LINEの映画館に車を走らせた。しばらくは自分自身だけの為に時を使おう。

てなわけで最終回なのでお別れシチュにしました。現実のワイは付き合ってもないから別れてもないし、そもそも高校時代に彼女もいない。フットサルもしたことない。あー。ヒャダインの現実が恋で満たされることを願っててください。ではまたいつの日か。

PROFILEヒャダイン(音楽クリエイター)

1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。
3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。
様々なアーティストへ楽曲提供を行うとともに、自身もタレントとして活動する。

一覧に戻る

ページトップへ戻る